よみもの
上履きから見える感覚過敏
よねもとたまお
新年度が始まって約二ヶ月が経ちました。
入学、進級したお子さん方は、ぼちぼち新しい環境に慣れてきたのではないでしょうか。
小中高校の一年生も緊張が薄れ、かぶっていた猫が剥がれている頃です。(笑)
授業中に上履きを脱ぐのは
校内でリラックスできるようになると、お子さんによっては、授業中に上履きを脱ぐことがあります。
小学校一年生で、新年度が始まって間もない頃なのに、なぜか新しい上履きが既に黒ずんでいるお子さんがいらっしゃいまして、よく観ていると、上履きをときどき脱いでは椅子の下で転がしたり、逆さまにして踏んづけたりしています。なので、早々と上履きが汚れてしまうのです。
小学校ですと、授業中に上履きを脱ぐ子どもは各クラスに概ね3〜4人位、観られます。
上履きを授業中に脱ぐ理由としては、主に以下の3点が考えられます。
①皮膚の感覚過敏のようなものがあり、靴の締めつけ感が気になる。
②じっと座っていることが苦手で、何かいじっていたい気持ちになる。
③足のサイズに対し、靴のサイズが小さいので履き続けることが苦痛。または靴が大き過ぎて脱げてしまう。
小学校低学年までは、観察のみからですと、①〜③の全ての可能性が考えられますが、小学校中学年から高校生にもなりますと少し変わってきます。靴が大き過ぎたり、小さ過ぎるなら自分で保護者への訴えができること、授業中は脱いでいて、授業以外の時はカカトを踏んで歩くなどが観られることから、無意識というより、意図的にちゃんと履かないのだろうなと考えられるのです。
感覚過敏が原因?
なぜ、そういう振る舞いをするのかというと、①皮膚の感覚過敏のようなものがあり、靴の締めつけ感が気になる、の可能性が大で、体を締め付けるような感覚がする服飾品が苦手だからなのかもしれません。
子どもは、自分の感じている感覚がどういうものなのか?快・不快の自覚も曖昧で、ましてやそれを言語で表すことなど、なかなか簡単にはできません。
不快なことが当たり前として生活していることもあり、なんだかイライラしていたり、不機嫌なことが多い、学校から落ち着きが無いと言われるという場合、皮膚の感覚敏感さに注目してみることを提案します。
ー学校で上履きを脱いでいないか?
ータートルネックの服を嫌がっていないか?
ー毛糸製品や襟ぐりのタグはチクチクすると嫌がらないか?
ー長ズボンより半ズボンの方を好んでいないか?
そのようなことを確認し、過敏さがあると思われた場合は、服、靴下はゆったりめの物とし、靴はピッタリより少しだけ大きめを選び、中敷や厚手の靴下で調節するのがよいかもしれません。
ご家庭でお子さんの上履きが汚れやすいことに気付いたときは、ご家庭から担任の先生に、上履きを脱いでいないかを含めた授業中の様子を、ときどき確認してみてください。また担任の先生方は、児童生徒の上履きの履き方、扱い方に着目し、気になることがある際には、ご家庭へ伝えていただきますようお願いいたします。
そして、このような傾向のあるお子さんの場合、他にも敏感さがあることが珍しくなく、味や食感、聴覚の過敏なども持ち合わせていることがあります。
食べ物の好き嫌いを単なる偏食、わがままと捉えたり、教室内のざわめきに疲れてしまう子どもを弱い子と捉えたりせず、言語化できずに困っている子どもたちの感覚や気持ちに、大人は敏感でありたいと思います。
よねもとたまお(よねもと たまお)
学校やフリースクール、放課後等デイサービス、ボランティアにおいて小学生から高校生、障害のある方々への美術教育に携わる。 子ども本人だけでなく、保護者含めたさまざまな方との関わりの中で、教育において支援的視点の必要性を強く感じ、スクールカウンセラーとしても勤務。
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